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手術で失われる「抵抗力」

今回は「手術で失われる抵抗力」というテーマです。
 
 
 
「乳ガン」の具体例で見ていきたいと思います。
 
女性Aさんは乳房のシコリに気づいた後、1年近くそのままにしていましたが、シコリは格別大きくならなかった。
しかし、家族の勧めで病院へ行ったら「乳ガン」宣告。
その結果、乳房だけではなくその裏側にある「大胸筋」まで切除する「ハルステッド手術」が実際されました。
 
その傷がようやく癒えたと思ったら、ポツポツと腫瘤が出始め、術後半年で「局所再発」が起こりました。
そして、他方で肺や肝臓に転移が出現して急速に増大し、手術から1年で死亡しました。
 
 
●なぜ、手術したのに局所に再発するのか?
 
その理由の1つは、手術で正常組織の「ガンに対する抵抗力」が失われるからです。
 
乳ガンでは乳房と胸壁(肋骨)の間に「大胸筋」という筋肉があり、乳房に生じた「ガン」が胸壁に侵入(浸潤)するのを防いでいます。
 
そして、ハルステッド手術では乳房と一緒に大胸筋が切除されるので、ガン細胞が胸壁に潜り込む機会(チャンス)はなかったはずです。
 
それなのに、胸壁に再発が生じたのは血管内に「ガン細胞」が存在し、手術時に血管がメスで切られてガン細胞が血管の外に出て、胸壁の傷口に取り付いたからです。
傷口は正常組織の「ガンに対する抵抗力」が、メスで切られたことにより、破綻しているのでガン細胞が取りつきやすいわけです。

 
 
●では、血液中のガン細胞とは何か?
 
ガン細胞が他の臓器に転移するときは、
①「ガン初発病巣」からガン細胞が離れて、
②血管に入って血流に乗り、全身を巡ります。
③そして、標的となる(肝臓や肺などの)臓器の所まで来たら、血管の外に出て、
④細胞分裂を開始し、「転移病巣」を作る
という段階を踏みます。

 
これら①〜④までのどこに障害があっても、転移病巣は形成されません。
ことに、ガン細胞が血液中に存在するけれども、それ以上のことは起こらないというケースは数多く見られます。



<参考文献>
もう、がんでは死なない ~二人に一人ががんになる時代の最高の治療法~
(マガジンハウス・2020)
著者:近藤誠

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