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緩和ケアを上手に使う

今回は「緩和ケアを上手に使う」というテーマです。

 

 
 

緩和ケアというと、末期ガンのケースを思い浮かべることでしょう。

 

しかし、ガンの末期とは言えなくても、重大な症状が出てくることがあります。

例えば、膵臓ガンによる「腹痛」、大腸ガンによる「腸閉塞」やガンが胆管を閉塞しての「黄疸」、あるいはガンからの「大出血」などです。

 

ガンを治療した後も、ガンを放置した場合も、これらの症状が出て生活の質が低下することがあります。

その場合、症状を和らげることが出来れば、身体が楽になって生命力が回復し、より長生き出来るものです。

どのような症状にどのような緩和法を用いるか。

ガンの種類や症状が異なれば、それに適した緩和ケアの方法も違ってきますが、典型的なケースを解説しましょう。

 
 

●痛みがある「膵臓ガン」を例にとります。

腹痛や背部痛が生じて、調べたら膵臓ガンだった場合です。

痛みはガンが膵臓の外に出て、周辺の神経を巻き込み、刺激するために生じています。

そのため、外科医も「手術不能」と言うはずで、鎮痛剤を処方されます。

それと共に担当医は、抗ガン剤治療を勧めてくるはずです。

「腫瘍内科」という、抗ガン剤治療を専門とする診療科に紹介されることもあります。

 

その場合、もし抗ガン剤治療を受けると、ガンが小さくなって痛みが軽減するケースもありますが、少数です。

そして、痛みが軽減した場合にも、抗ガン剤の副作用が出て苦しみますし、命の長さも縮むでしょう。

 

従って、鎮痛剤が効かないケースや、痛みをとって鎮痛剤を止めたいケースでは、副作用がほとんどない「放射線治療」を受けるのが最適です。

ガンの部位に集中的に放射線を照射するため、痛みが取れる可能性は抗ガン剤のそれを凌駕します。

 

しかし、問題が2つあります。

 

1つ目は担当医が放射線治療科を紹介してくれないことが多々あることです。

 

患者さんが「放射線はどうですか?」と聞いても「いや、抗ガン剤で行きましょう」と取り合ってくれないのです。

病院のしきたりとして、担当医が紹介状を書かないと他科を受診することは困難です。

要するに病院の中に見えない壁があり、患者さんだけでそれを突破するのは難しいのです。

 

2つ目は放射線治療のやり過ぎです。

 

膵臓の周囲には胃袋や腸などの重要臓器があり、「過線量」になると消化管の穿孔(=穴が開く)や出血などが生じて落命することさえあります。

従って、放射線治療医と総線量(つまり治療回数)についてよく話し合いましょう。




<参考文献>
もう、がんでは死なない ~二人に一人ががんになる時代の最高の治療法~
(マガジンハウス・2020)
著者:近藤誠

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